ペットを日本に連れていく「輸入検疫手続き」には、最短でも約7ヶ月かかります。
まだいつ引っ越すか具体的に決まっていなくても、決まってからでは遅いので早めに準備を始めましょう。
動物検疫所の輸入の手引書をじっくり読み、ネットで体験談をいろいろと読みましたが、各家庭でケースはさまざま。
実際に準備を始めて、たくさんの疑問が出てきました。
この記事を読むとわかる事
- 体験談
- 輸入免疫手続きの流れ
- 手順1-8について解説・それぞれのポイントと注意点
- 私たちがお世話になった動物病院(カリフォルニア・サウスベイ)
- 輸入免疫手続きにかかった総額費用
それでは詳しく説明していきます。
これから愛犬や愛猫などのペットを連れて日本に行く予定の方の参考になれば嬉しいです。
輸入免疫手続きの流れ
まずは「動物検疫所:犬、猫を輸入するには」をしっかり読みましょう。
動物検疫の目的と役割
動物検疫は、外国から輸入される動物・家畜産物などを介して家畜の伝染病が国内に侵入することを防止するのが目的です。
そして輸出入される犬・猫などを通して狂犬病がひろがる事を防止するためです。
日本国内では1957年以降、狂犬病の感染・発症の事例がないそうです。(狂犬病流行国で犬に噛まれて帰国した後に発症した事例はあり)
アメリカでは毎年4000件の狂犬病症例が報告されていて、その90%は野生動物から発生しているそうです。
それらの狂犬病が流行している国からやってくる動物・家畜産物に対して厳しい検査が行われます。
輸入手続きの基本的な流れ
これから解説していくのは、アメリカ本土 = 指定地域以外の手続きの流れです。
手順1から手順8まであります。
最短でも約7ヶ月かかるプロセスです。
狂犬病抗体検査の採血が終わり次第、180日間の待機をせずに日本に行く事もできますが、不足分の日数の間動物検疫所の係留施設でペットが待機しなければいけません。
やむを得ない事情がある場合以外は、それは避けたいですよね。
手順1 – マイクロチップの埋め込み
狂犬病注射の前にISO規格(国際基準)のマイクロチップを埋め込む
マイクロチップの基礎と目的
マイクロチップは安全で確実な個体識別を目的としたものです。
犬や猫が迷子になった時や災害、事故などによって飼い主とはぐれてしまい保護された時に、マイクロチップを読み取る事で、データベースに登録されている飼い主情報を確認して飼い主のもとへ戻す事ができます。
注射器のような注入器で、首の後ろの皮下に埋め込むのが一般的です。
マイクロチップを埋め込んだ事によって病気や死亡の報告はないそうです。
推奨されているマイクロチップの規格
ISO規格のマイクロチップ(番号が数字のみで15桁のもの)
(ISO 11784 及び 11785、ISO:国際標準化規格)
引用 : 手引書
まずうちの愛犬は現在4歳で、生後半年くらいの頃にアメリカ・ロサンゼルスのVCA(アメリカ大手の動物病院)でマイクロチップを埋め込みました。
その頃は日本に連れて行くなんて考えていなかったので、そのマイクロチップがISO規格なのかなど考えた事もありませんでした。
うちの愛犬に埋め込まれてるのは〝Home Again〟というブランドです。
番号が数字のみで15桁ですが、ISO 11784や11785という表示はどこにもありせん。
Q&A
動物検疫所のよくある質問も合わせてよく確認して下さい。
手引書、よくある質問を読んでも分からなかった疑問をまとめました。
手順2 – 狂犬病予防注射
- 狂犬病注射の有効免疫期間が途切れないように追加接種する
- 合計2回以上+直近2回分の接種証明書にマイクロチップナンバーの記載が必須
有効免疫期間を過ぎてから接種されたものは「追加接種」と認められません。
日本到着日より前に有効免疫期限が途切れないように、追加接種していく事が必要です。
2回分の接種証明書にマイクロチップナンバーの記載が必須です。
追加接種する為にVetcoへ
うちの愛犬は子犬の時に狂犬病注射を1回、その2年後にもう1回、すでに合計2回接種していました。
しかし当時日本に連れて行くと思っていなかったので、接種証明書にはマイクロチップナンバーの記載がありません。
2回目の狂犬病注射が日本帰国までに切れそうだったので、早めに追加接種する事にしました。
予防注射はいつもVetco(ペット用品店Petcoの動物病院)にお願いしています。
最初にマイクロチップをスキャンしてもらい、ちゃんとスキャンできるか確認してもらいました。
追加接種をし、証明書にマイクロチップの番号を入れてもらいました。
問題は前回の狂犬病注射の証明証に〝マイクロチップナンバーが記載されていない〟事です。
ネットで体験者さんの記事を読みましたが、マイクロチップナンバーの記載がなくて愛犬と入国できない人がいたとか…!!
それは絶対に避けたい。しかし数年前の証明証にマイクロチップナンバーを入れてもらう事がとても難しかったです。
なんとかお願いし、入れてもらう事ができました…!
日本に連れて行く可能性がある家庭では、念の為毎回マイクロチップナンバーを入れてもらいましょう。
手順3 – 狂犬病抗体検査
狂犬病に対する抗体価が0.5IU/ml以上
狂犬病抗体検査の流れ
▼アメリカ国内で狂犬病の抗体検査をするラボは2箇所しかありません。
- カンザス
- 軍
アメリカに住んでいる方でアメリカ軍関係者以外の方は、カンザスのラボに送る事になります。
健康診断→採血→適正な方法で血液を梱包→血液をカンザスに発送→「狂犬病抗体検査」という流れになります。
輸入検疫手続きに詳しい動物病院に行く
かかりつけの動物病院に電話をしたら、ペットの国外への移動についてはあまりわからない様子で採血や証明書は出していないと言われました。
かかりつけの動物病院に紹介してもらった、輸入免疫手続きに詳しい動物病院に行きました。
慣れているようで話がスムーズに進みました。みんな優しくて親切でとても良かったです。
初診だったので健康診断をして、採血をしてもらいました。私たちが行った日は金曜日だったので一旦血液を冷凍し、月曜にカンザスの指定されたラボに送ると言われました。
この病院は、抗体検査費用の支払いから、採血、適正な方法で梱包、カンザスに発送までしてくれました。
ネットでいろんな方の体験談を読みましたが、自分でカンザスのサイトにアクセスし支払いを済ませて、動物病院で採血だけしてもらって、自分でカンザスに発送したという方もいました。
私たちは分からない事だらけで間違えたりしたら怖かったので、慣れた病院の方に全部やってもらい安心でした。ただしその分費用が高くなるのかもしれません。
抗体検査自体の費用は$81ですが、初診料、健康診断、採血などもろもろ合わせて私たちは$450支払いました。
値段は病院によってピンキリのようです。私たちは他の病院と値段を比べたりしませんでしたが、(すれば良かった)$400-700とかなり差があるようです。
しかしネットで調べるとロサンゼルスで$450は妥当な気がしています。
抗体検査結果
採血日から10日後にお願いした動物病院からEmailで簡易版の検査結果が送られてきました。
検査結果は、「3.46IU/ml」だったので合格!
狂犬病に対する抗体価が0.5IU/ml以上でなければいけません。
ネットで体験談を調べた時にシールが付いた原本(紙)が必要とあったので、事前にシールが付いた原本が欲しいと伝えていました。
しばらくしても連絡が来ないので、連絡したら原本はなく簡易版(Emailで送られてきた物)で大丈夫と言われました。
実際に簡易版を印刷して提出しましたが、問題無く入国できました。
サウスベイの動物病院
私たちが行った動物病院はレドンドビーチにあります。
ロサンゼルスのサウスベイ付近に住んでいる方にはおすすめです。
輸入免疫手続きに詳しく、話がスムーズに進むうえ、みなさん優しくて親切でした。
値段を比較したい方は他の病院も探してみてください。
Redondo Shores Veterinary Center
住所 701 S Pacific Coast Hwy, Redondo Beach, CA 90277
営業時間 月-金 8am-6pm 土 8am-1pm
定休日 日曜日
手順4 – 輸出前待機
採血した日を0日とし、そこから180日間以上の待機
国外に出ない事以外、何も制限はありません。
180日間の待機せずに日本に行く事もできますが、不足分の日数の間動物検疫所の係留施設で待機しなければいけません。
やむを得ない理由がない限り、どんな施設でどんな環境かも分からない場所に愛犬を置いておくのは不安です。
それは避けたいのでアメリカの自宅で普段通り過ごして待ちました。
手順5 – 事前届出
- 到着日の40日前まで
- 届出の内容を変更する場合は変更届
事前届出
▼提出の仕方は2通り。
- NACCSを利用しオンラインで
- フォームを記入し、FAXかEmailで送る
出発日の40日前までに到着予定の空港に「事前届出」を提出しなければいけません。
クレジットカードのポイントで安いチケットを購入しようと思っていたので、どうしても日にちが確定するのが早くても2週間前になりそうでした。
具体的な到着日が決まっていない場合、仮の到着日を設定していいようです。
そこで大体の予想で、日本に行くであろう日付から40日前に事前届出を提出しました。
NACCSを利用して提出しようと思いましたが、うまくできず。結局フォームを記入してEmailで提出しました。
この事前届出が受理されると到着する空港の担当者の方から「届出受理書」が届きます。
NACCSを利用した方は、NACCSから「届出受理書」をダウンロードしてください。
翌日には届きました。他に輸入検査申請書や空港の地図なども送付されていました。
「届出受理書」と「輸入検査申請書」が重要な書類になります。内容に間違いがないかよく確認しましょう。
変更届
到着日の延期や到着空港の変更は、そこに書いた到着日の5日前までに変更届を提出するよう推奨されています。
チケットが取れたあとすぐに変更届を提出しました。
NACCSを利用しオンラインで提出した方は、変更届もNACCSで行います。
- 到着日を早める
- 輸入頭数を変更
- 他の個体に変更
- 到着予定日を過ぎてから日程を変える
羽田空港から成田空港に変更する場合、始めに申請した羽田空港宛に〝成田空港に変更になる旨〟を記載し「変更届」を提出しなければいけません。
夫の名前のスペルやペットの誕生日も間違えていたので、修正してもらいました。
変更届を提出したあとに新しい「届出受理書」が届くまで1週間ほどかかりました。
5日経っても届かない場合や急ぎの場合、問い合わせしてみてください。
届いたらまた内容に間違いがないかよく確認しましょう。
手順6 – 輸出前検査
出発直前(10日前以内)にUSDA認定されている動物病院で検査を受ける
マイクロチップ、狂犬病予防注射、採血はかかりつけの動物病院で大丈夫ですが、輸出前検査は「USDA認定されている動物病院」を探す必要があります。
- USDS – United States Department of Agriculture(アメリカ合衆国農務省)
Google mapなどで「USDA accredited veterinarian」と検索し、最寄りの動物病院を探してください。
私は狂犬病抗体検査でお世話になった同じ動物病院に出発10日前にお願いしました。
▼検査内容
- 犬の場合は狂犬病およびレプトスピラ症にかかっていない又はかかっている疑いがないか
- 猫の場合は狂犬病にかかっていない又はかかっている疑いがないか
結果は健康&疑いなし!$523支払いました。
手順7 – 輸出国政府機関発行の証明書の取得
- 「輸出国政府機関発行の証明書」=「裏書き証明」
- 「Date of identification」はマイクロチップを埋め込んだ日付
VEHCS
2021年以降オフィスでは受付していないようです。
アメリカでは2022年12月1日より、電磁的記録による検査証明書も認められています。
「電磁的記録による検査証明書」とは、VEHCSというシステムを利用して取得する証明書です。
- VEHCS – Veterinary Export Health Certification System
紙の原本が必要ないということです。
輸出前検査でお世話になった動物病院が書類を作成し、VEHCSを利用してUSDAに申請してくれました。
USDAからの「輸出国政府機関発行の証明書」がいつ届くのか、間に合うのかとても不安でした。
火曜日に輸出前検査を受け、届いたのは翌週の月曜日でした。出発の5日前でした。
裏書き証明(Form AC)
▼クリックすると拡大できます。
日本政府推奨様式は「Form AC」です。
※裏書き証明(endorsement)とは
輸出政府機関による証明書の承認を指します。裏書き証明として、輸出国政府機関の獣医官の署名(直筆)、公印、所属機関名、証明日が必要です。裏書き証明が完了していない場合、輸出国政府機関が発行する証明書とは認められません。
その他に間違えやすい箇所は、「Date of identification」– マイクロチップを埋め込んだ日付です。
一度申請し「輸出国政府機関発行の証明書」=「裏書き証明」が出来上がってからの変更は難しいようです。
間違いがないか再度確認しましょう。そしてすぐに到着予定の空港にその書類を送り内容を確認してもらいましょう。
内容が一致しない箇所があったので、変更届を出すように言われ修正してOKを頂きました。
手順8 – 日本到着後の輸入検査
届出受理書が送られてくる時に、上記の案内も送られてきます。
ペットを貨物に預けている場合、日本に到着次第ペットを受け取り関税カウンターに行く前に「動物免疫カウンター」で輸入検査を受けます。
うちの愛犬はサービスアニマルとしてキャビンに搭乗していたので、飛行機の出口で係の方が待っていてくれました。
補助犬以外は空港内を歩けないので、ペットの体全体が収まるケージかキャリーに入れるように指示されました。
手荷物になるので、折り畳めてさらにウィールが付いているキャリーを準備して持って行きました。
荷物が多かったのでウィールが付いていてとても便利でした…!
係の方の指示に従い、一緒に「動物検疫カウンター」へ行き輸入検査を受けました。
- 輸入検査申請書
- 狂犬病抗体検査結果通知書
- 輸出国政府機関が発行する証明書(Form AC)
上記の他に念の為、マイクロチップの証明書や狂犬病の予防注射証明書など一通り持って行きました。
所要時間は、約20分。無事に問題無くスムーズに入国することができました。
ペットの輸入検疫手続きにかかった費用総額は?
ペットと共にアメリカから日本へ行くことを考えている方の参考になると思ったので、かかった費用を計算してみました。お世話になった動物病院名も記載しておきます。
マイクロチップ $39 – VCA
狂犬病注射1回目 $19 – Vetco
2回目 $19 – Vetco
狂犬病抗体検査(初診の健康診断、採血、発送料、抗体検査費用全て含む) $450 – Redondo Shores Veterinary Center
輸出前検査 $523 – Redondo Shores Veterinary Center
総額 $1,050
抗体検査の工程は動物病院によってやり方も違うでしょうし費用もピンキリです。
USDA認定の動物病院による輸出前検査もピンキリだと思いますが、なかなか高かったです。
少しでも安く済ませたい場合、何軒か動物病院をあたって値段を比較する事をおすすめします。
日本に移住するにあたって、入国の書類に一番お金がかかったのは愛犬です。笑
輸入検疫手続きまとめ
重要ポイントのおさらい
- 手続きには最短でも約7ヶ月かかる
- 費用は約$1000
- マイクロチップが読み取れるか確認
- 「輸出国政府機関が発行する証明書(Form AC)」が届いたら到着予定の空港にEmailで送り事前に書類を確認してもらう
愛するペットをアメリカ本土から日本に連れて行きたいと考えている方は、輸入検疫手続きに最短でも約7ヶ月かかるので早めに準備を始めましょう。
最悪の事態を避ける為、「輸出国政府機関が発行する証明書(Form AC)」が届いたら到着予定の空港にEmailで送り事前に書類を確認してもらう事がとても重要です。
そこで事前にOKがもらえれば、安心して輸入検疫に臨めます。
ひとつでも書類に不備があると検疫で最長180日の係留検査または返送処分になってしまいます。
書類が揃っていなくてペットが入国できず、泣いている人がいました。
「輸出前検査」を出発の10日以内に受け「輸出国政府機関発行の証明書」が間に合うのかかなり不安でしたが、無事間に合いました。
やることはいっぱいありますが、ひとつひとつ進めていけば問題ないです。
空港の輸入検疫の係の方はとても親切なので、わからないこと・不安なことは質問した方がいいです。
この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。
サービスアニマル
アメリカのサービスアニマルは、アメリカの航空会社であれば国際線でもサービスアニマルとして搭乗することができます。アメリカの法律が適用されるようです。
今回利用した航空会社は「シンガポール航空」だったので、ギリギリまでキャビンに搭乗する許可が降りなくてドキドキしました。
輸入検疫手続きと同時進行で、航空会社への申請も進めていました。
サービスアニマルに必要な書類の他、医者からの手紙や「届出受理書」や「輸出国政府機関が発行する証明書(Form AC)」も提出し、直前にキャビンに搭乗する許可が降りました。
利用する航空会社によって異なると思うので、航空会社に問い合わせてください。
日本は補助犬に対する基準が高く、「盲導犬・介助犬・聴導犬」以外は補助犬として認められません。日本で特別な訓練を受け認定される必要があるようです。
さらに日本の空港は、補助犬以外空港内を歩くことも許されていません…。日本に到着したらすぐペットの体全体が収まるケージに入れなければいけません。
「ほじょ犬トイレ」が設置されているようですが、成田空港は国際線出国手続き後のエリアにしかありません。長時間のフライトを終えて入国して来たペットはどうすれば良いのか不安でした。
成田空港第1ターミナル南ウィングに到着しインフォメーションカウンターで聞いたところ、外に出て南ウィングと北ウィングの中間にある木が生えているエリアで排泄させていいと言われました。
約12時間のフライトだったので急いでそこまで行って、軽く散歩して排泄しました。
日本がもっともっとペットフレンドリーな世の中になるといいなと心から願います。